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パナソニック、4層RGBで最高輝度&色域の有機ELビエラ。6年ぶりフルモデルチェンジ

65型の4K有機ELテレビ「TV-65Z95B」

パナソニックは、新世代有機ELパネル“プライマリーRGBタンデム”とパネル空冷技術“サーマルフロー”を採用した有機ELテレビ「Z95B」シリーズを6月下旬より発売する。価格はオープンで、市場想定価格は65型が53万円前後、55型が38万円前後。

有機ELビエラ【Z95Bシリーズ】
・65型「TV-65Z95B」 53万円前後 6月下旬発売
・55型「TV-55Z95B」 38万円前後 同上

最新世代の有機ELパネルと、独自のパネル冷却・制御技術を組み合わせることで、「かつてない明るさ・色鮮やかさ」を実現したという有機ELビエラのフラッグシップモデル。

画質だけでなく、スピーカーユニットもすべて再構築し、最大出力と立体音響サウンドを強化。さらに2019年から踏襲してきた筐体デザインも刷新し、6年ぶりにフルモデルチェンジした。

セルの発光性能を高めるパネル冷却技術「サーマルフロー」

LGディスプレイが開発・供給する、第4世代有機ELパネル・プライマリーRGBタンデムを初搭載した。

進化したのは、パネルの内部構造。前機種「Z95A」シリーズを含むこれまでの有機ELパネル(WOLED)は、2つの青色発光層に黄色(赤+黄+緑で構成)の発光層を挟み込む3層構造となっていた。しかし、黄色は混色のため、赤・緑の色純度が低いという課題があった。

そこで新パネルでは、赤・濃青・緑・濃青という4層構造に改良。“光の三原色”である赤・緑・青を発光させることで光の純度が上がり、広色域化を実現。これまで表現できなかった鮮やかな緑や赤色が描写できるようになった。

さらに発光効率も改善。MZ2500やZ95Aで採用していたマイクロレンズアレイ技術を使うことなく、パネル輝度の大幅な向上を実現した。

プライマリーRGBタンデムの構造を示したイメージモデル

新パネルに合わせて、従来の独自素材貼り付け&バックカバー一体型放熱プレートに追加したのが、パネル空冷技術「サーマルフロー」。これは、レーシングカーの設計でも活用される、空気の流れをコントロールする技術「エアロダイナミクス」を放熱設計に応用したもの。

ビエラ技術陣は、流体シミュレーションを駆使して、通気口の位置や内部構造物の配置を見直すことで、下部から吸気した空気を素早く排気できる筐体・内部構造を開発。放熱プレートなどの熱が早く外へ吐き出され、セルの発光性能をさらに高めることに成功した。

「パネルからの放熱を素早く逃がすことが発光性能を引き出すうえで重要なポイント。Z95Bでは、前機種のような乱流を発生させずに、スムーズな気流でパネル冷却が行なえるようになった」という。

サーマルフローデモの様子。左が前機種「Z95A」で、右が新機種「Z95B」。Z95Bの方が短い時間で、排気口から白い煙が排出されていた
パナソニック・有機ELビエラのパネル空冷技術「サーマルフロー」デモ

また、パネルの発光を制御する技術「Bright Booster」も進化した。

従来は、3次元映像信号解析と温度センサーを組み合わせ、パネルの発光状態を画素ごとに管理して、独自の電流制御アルゴリズムでパネルを駆動。加えて、リアルタイムでパネル発光性能を解析し、それをフィードバックすることでパネルの発光性能を引き出していた。

Z95Bでは、後段の発光性能解析に、新開発の熱解析シミュレーションを導入。シミュレーション結果も参照しながらリアルタイム解析することで、更なる高コントラスト化を実現した。

55型「TV-55Z95B」

映像エンジンは、Z95Aで搭載された新世代AI高画質エンジンを継承。シーン・環境光に連動して画質を自動調整する「オートAI画質」や高精細化処理の「4Kファインリマスターエンジン」、広色域化の「ヘキサクロマドライブ プラス」など、従来の高画質処理を引き続き搭載する。

今回新しく加わったのが「ダイナミックディテールエンハンサー」と名付けられた機能。独自の映像処理アルゴリズムを使い、映像のガンマを微細なエリアごとに個別に調整することで、クッキリとした解像感あふれる映像にするという。

動画配信サービスPrime Videoの映画やビデオコンテンツを再生すると、クリエイターの意図を忠実に再現する画質に自動で調整する「Prime Videoキャリブレーションモード」は、後日アップデートで追加される。

なお、'25年モデルでは専用ソフト「Calman」を使ったオートキャリブレーションに対応。一方、これまでフラッグシップ機で行なわれていた「プロフェショナルクオリティのパネルチューニング」(製造ラインで高性能カメラ測定&調整~最後は人の目で確認)はカットされた。

スピーカーは全ユニットを刷新。ファブリック素材の新筐体に

サウンドシステムは、ラインアレイスピーカー・イネーブルドスピーカー・ワイドスピーカー・ウーファーで構成する「360立体音響サウンドシステム+」。名称こそ昨年ままだが、全ユニットを刷新。特にウーファーはパッシブラジエーターが倍増し(2個→4個&対向配置)、出力がアップ。合計出力は65型で170W、55型で160Wを実現した。

上述のサーマルフロー構造で、イネーブルドスピーカーの位置を変更。画面中央から左右へユニットの間隔を約2倍に離すことで、立体音響の効果がアップ。音場の広がりと音の動きのダイナミズムが向上した。

Z95Bのスピーカーレイアウト
新ウーファー

昨年に続き、OSには「Fire TV」を搭載。数多くの動画・音楽・ゲームアプリがアプリが楽しめるほか、テレビ放送とネット動画を横断して選べるホーム画面、サクサクと快適に操作できるレスポンス性を実現している。

Fire TVでも、4K衛星放送録画(USBハードディスク使用時)やお部屋ジャンプリンク(クライアント機能)、過去未来番組表(ディーガ連携)といった従来のビエラの独自機能を継承。お部屋ジャンプリンク(サーバー機能)やPanasonic Media Access、LANダビングもサポートする。

リモコン

チューナーは、BS4K・110度CS4Kチューナー×2、地上/BS・110度CSチューナー×3を搭載。別売のHDDを接続する事で裏番組録画ができるほか、2K+2K放送や4K+2K放送、4K+4K放送の2番組同時録画も行なえる。

HDMI入力は4系統。最大4K/144pまでの高リフレッシュレート信号の入力に対応しており、4K/144Hz対応の最新PCゲーム・グラフィックボードを接続すれば、滑らかでチラつきのない高精細映像でゲームが楽しめる。

前面スピーカーのグリルや側面にファブリック素材を配した、新筐体デザインを採用。背面はフルフラットになっており、本体最厚部も52mmまで薄型化(Z95Aは69mm)。パナソニックロゴやTechnicsロゴも必要最低限のサイズに抑えられ、「画と音に集中できるデザイン、ミニマルな佇まいを目指した」という。

フルフラットになった背面
筐体にファブリック素材を使用。スタンドは転倒防止&スイーベル機能付き
上部のTechnicsロゴバッジ
Panasonicロゴもファブリックに溶け込むカラーに

有機ELビエラ初となる、着脱式電源ケーブルを採用。ACインレットの周辺に凹みがあるためプラグを選ぶが、好みの電源ケーブルに交換することが可能だ。

背面
ACインレット部分

Z95Bを視聴した

短時間ながら、Z95Bを現行モデルと比較視聴することができた。

その差は歴然で、横に設置した現行機(Z95Aなど)が暗く見えてしまうほど、Z95Bはとにかく明るい。ハイライトだけの話ではなく、平均輝度が高い放送素材を映しても輝度が安定していて、パキっと鮮明なままで画の抜けが良い。

色も鮮烈。白が濁らず、余計な色も乗らず、本当に純度の高い白が表示されていることに感動した。苦手とされた深い赤、深い緑も難なく描写。QD-OLEDと比べても、実用上ほぼ遜色のない広色域性能だろう。

マイクロレンズアレイが無くなったことで、明所コントラストが改善されたことも大きい。部屋を明るくした状態でも暗部の浮きがなく、安定した黒を再現できている。リビング利用も全く問題ない。

最後に、暗室環境でNetflix映画「新幹線大爆破」を鑑賞。新幹線のサーチライトや車輪から飛び出すパーティクルが強烈で、明るさを少し絞りたくなるほど眩しい。サウンドはZ95Aと比べて高域が伸び、セリフがクリアで聞きやすい。立体音響の音場も広く、低域もリッチ。「有機ELテレビのひとつの完成形」と言っても差し支えないほどの出来栄えだ。