ミニレビュー

ソニー「Xperia 1 VII」のBluetooth送信パワー2倍の実力は!? 人通りが多い駅で体験してみた

Bluetooth送信パワー2倍の実力やいかに

Xperia 1 VIIが登場し、その新機能の中で気になる項目があった。それは「Bluetooth送信パワー2倍」。イメージ的な“2倍”ではなく、日本国内では数値的にも2倍になっているそうだ。ただ、気になるのはやはり“実際に人混みの中でも繋がるのか、安定しているのか”という事。そこで、Bluetoothが途切れやすい人通りの多い駅で、どれくらい途切れにくくなっているのか試してみた。

使うのはもちろん「Xperia 1 VII」と、その前機種「Xperia 1 VI」。筆者が普段使っている「Pixel 8a」も加えた3機種で比較してみた。

使用するコーデックは、ワイヤレスでもハイレゾ相当の再生ができるLDAC。ソニー製品をはじめ、高音質コーデックとして、ハイエンドクラスの価格帯のワイヤレス製品には最近は採用されていることも多いコーデックだが、接続性があまり良くないという弱点を持っている。

筆者は普段、完全ワイヤレスイヤフォン「WF-1000XM5」をPixel 8aにLDACで接続して使っているのだが、人が多い駅などでは、片側の音が全く聞こえないなんてこともしばしば。それでも両側が全く聞こえなくなったり、ノイズだらけになってしまった昔のバージョンに比べれば、Bluetooth 4.xや5.xはだいぶ安定してきてはいるのだが、それでもなお、「途切れやすい」という印象を持っている。

左からXperia 1 VI、Xperia 1 VII、Pixel 8a。イヤフォンはWF-1000XM5

まずはPixel 8aで。いつもと同じ片側がほぼ聴こえない状態に

まずはいつも通りPixel 8aとLDACで接続して、ズボンの右側のポケットに入れる。今回検証に使うのも「WF-1000XM5」だ。

品川駅の改札から港南口に向かって歩いてみると、新幹線の改札に近づくにつれてさっそくスマホから離れている左側が無音に。右側は途切れずに曲が再生され続けるが、左側は一瞬ブツっと言ったり、ちょっと聞こえては消え……を新幹線の改札辺りまで繰り返し、アトレの辺りでも左側が何度がブツブツと音が一瞬聞こえたり消えたりして、筆者にとっては「いつもの品川駅」という感じ。

ラッシュほどではないけど、人通りは多い

もう一度JRの改札の方まで戻ってみると、やはり新幹線改札付近が鬼門という感じで、左側がほぼ無音でノイズキャンセリングだけ働いているという状態になる。

Xperia 1 VIは大きな途切れはあるものの、Pixel 8aよりは安定

戻ってきたところで、次は「Xperia 1 VI」にバトンタッチ。もちろんLDACで接続。そして同じようにズボンの右ポケットに入れて歩き出す。ここでちょっと驚きのポイントだったのが、左側は途切れるものの無音にはならないという点。ブツっと大きく途切れることはあるものの、無音状態が続く事はなく、鬼門だった新幹線改札口付近も通過。アトレ付近ではもう普通に両側から再生されていた。

Pixel 8aの時と人通りはほぼ変わらないのだが、この時点ですでに繋がりやすいという予想外の結果になった。

LDACは、状況に合わせて330kbps、660kbps、990kbpsの3段階にビットレートを調整する規格になっており、Xperiaでは、Bluetooth設定画面でHDオーディオ:LDACをオンにした状態で、「ワイヤレス再生品質」を「自動」にすることで、この3段階に調整する状態になるという。一方で、この「ワイヤレス再生品質」を「音質優先」に設定すると990kbpsで固定になる。ちなみにデフォルトでは自動になっており、先程のXperia 1 VIのテストでは自動に設定している。

Xperia 1 VIIの設定画面
ワイヤレス再生品質を自動にしておくとつながりやすくなる

ややこしいのが、WF-1000XM5のようなソニー製品を使っている場合は、ソニーのアプリ「Sound Connect」にも似たような名前の「Bluetooth接続品質」という設定項目があり、こちらは「音質優先」にしておかないとLDACで接続してくれないという点。アプリを開いた際に、LDACと表示されていなかったら、Sound Connectアプリ内の設定は音質優先にしよう。

Sound Connectアプリの設定画面。赤枠の部分を「音質有線」にしないとLDACで接続できなくなる。ややこしい……

そして問題のPixel 8aには、Xperiaにあった「ワイヤレス再生品質」の項目が設定画面にないため、どういった処理がなされているかがわからない。明らかにつながりにくかったので、もしかすると、990kbpsで固定されてしまっているのかもしれない。

Pixel 8aにはワイヤレス再生品質に当たるメニューがない……

小さな途切れはあるものの、送信パワー2倍はちゃんと体感できるレベル

そしていよいよ本題のXperia 1 VII。こちらも同じくLDAC接続でズボンの右側のポケットに入れ、JRの改札口から歩き始める。「ワイヤレス再生品質」は自動にしている。

すると、若干怪しくはなるものの、ブツッと大きく途切れることがない。難所である新幹線改札口付近も、左側が若干プツプツ言ったり、不安定に音が揺れるような感じになることは多々あるものの、先程のXperia 1 VIやPixel 8aのような大きな途切れはほとんどなく、比較すればすぐに“安定性がアップした事”を体感できた。

ちょうどこの辺が鬼門。Xperia 1 VIIは不安定にはなるものの、大きな途切れはなかった

今回のテストはなるべく人通りの多いタイミングを狙ったが、通勤ラッシュの時間ではないため、ラッシュ時はもう少し途切れてしまうかもしれない。それでも、送信パワー2倍の恩恵はしっかり実感できるだけの進化と言えそうだ。

他にも、東京駅のJR改札内から新幹線改札口に向かう混雑しやすい場所でもXperia 1 VIIはズボンのポケットに入れたままで安定して接続してくれた。

LDACを常時使っている身とすれば、途切れやすい場所や人が多い場所はスマホを胸ポケットに入れたり、胸の辺りに持って移動したりといったことをクセのように身につけていたが、Xperia 1 VIIであればラッシュの時間でもない限り、ポケットに入れっぱなしで大丈夫そうだ。

今回全てのコーデックで試したわけではないが、LDACでここまでしっかり繋がるのであれば、他のコーデックもそうそう途切れないだろう。

この送信強度がXperia 5シリーズやXperia 10シリーズにも採用されれば、色々なコーデックで聴けて、さらに繋がりやすいというワイヤレスでの強みも得て、3.5mmジャックでの有線と合わせて、音楽好きには嬉しいポイントになりそうだ。

野澤佳悟